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金魚風美人

<小説>椿實「金魚風美人」幻戯書房(『メーゾン・ベルビウの猫』収録)

冬にしては暖かい日でオーバーやファアを脱いだ人並みが私の背後を通り過ぎていた。ダンサァの引け時らしい。その中が洗面器に金魚を放したように赤く染まった。緋色の着物を着た女が私に近寄って来たからだ。

人違いかもわからないのに私は彼女とつき合って別れます。そして5月、私はまた彼女に再会します。白昼夢か白い道を異国の兵隊が歩いてくるのですが胸に金魚鉢を抱えています。そのジャボジャボあふれる水の中で金魚は赤く輝いています。その後彼女と行った仏蘭西料亭が現れて、入ると彼女がいました。彼女は洋装で彼のことは覚えていないようでした。私は金魚を1匹買って帰ります。

面白いのは金魚の性格について語っているところです。金魚がいつも同じ様子をしているとは限らない。ぴちぴちしたやつもあれば、あきらめたように動かないのもある。私は一番あきらめた様子のやつを抱いて帰りました。金魚は私の机の右側で浮かんでヒレも動かさず時々私にお辞儀をしました。私はその金魚を見ながら彼女のことを考えるのでした。

お辞儀をする金魚というのがいいですね。おりゃーっとラテン系の金魚も大人しい金魚も飼ったけど、大人しいのは買って来てすぐと死にそうな時です。出目金は大人しいというより鈍かった。可愛いけど。大人しい金魚がいいけど、弱いのはへこみます。餌の時だけ愛想が良くてあと見向きもしない金魚が一番長生きしてくれそうな気がします。それでいいのよ。